酸化物ガラスの構造緩和の微視的機構の解析

酸化物ガラスはガラス転移温度付近に置かれると、その温度に応じた構造へと時間をかけて変化していきます。

このような構造緩和は製造されるガラスの体積を決めたり、ガラスの熱処理中に体積変化を生じる原因となるため、応用上重要な現象です。

Tool-Narayanaswamy-Moynihan-modelなどのモデルは構造緩和現象を良く記述するモデルですが、

原子レベルでの構造再編の詳細は明らかになっていません。

我々は、16万粒子、2マイクロ秒という、

ガラス関連で行われた分子動力学計算としては世界で初めての大規模計算を行い、

窓ガラス等の基本組成であるソーダライムシリケートガラスの、体積緩和機構の一部を明らかにしました。

ガラスを構成するリング中にNaイオンが入り込むことでリング内空間を埋めて高密度化し、

体積が小さくなることがわかりました。

またそのようなリングはポテンシャルエネルギー的に安定化することがわかりました。

しかし、これによって体積緩和現象が全て解明できたわけではありません。現在更なる解析を進めています。