研究背景
ガラスは、ディスプレイ、太陽電池、照明、光通信等の製品において、性能、サイズ、デザインを決めるキーマテリアルです。また、身の回りにも広く使われている馴染み深い材料でもありますが、割れやすく典型的な難加工材料であることから、広範な製品への適用が制限されています。そこで、世界トップの技術と製品シェアを誇る日本のガラス産業を継続して発展させるために、ガラス加工が直面している諸問題を克服することが非常に重要な課題となります。
事業概要
本研究開発においては、成型・切断・接合という3つのガラス加工上の要素について、ガラス内部に生じる複雑な現象を解明することで、速度、精度、面積を飛躍的に向上させる革新的な生産技術を開発する。また、加工のベースとなるサイエンスの構築やシミュレーション技術の開発を関西圏に集積するガラス関連の大学・研究所で実施する。その結果を元に、現在、技術、市場で世界的に優位性をもつ複数のガラス企業で製品開発し、ユーザーからのフィードバックを受けながら部素材、加工方法をパッケージで供給することを目指す。本研究では、成型については精密転写プレス成型を高度化し、従来の精密形状プレス成型の限界サイズを超えるとともに、ガラスにおいて困難であった異形物(複雑形状物)成型が可能な射出成型を初めて実現することを目指す。また、切断・接合においては割れの問題を回避でき、熱変形が起こりにくい超短パルスレーザーによる加工を採用し、速度、精度を向上させ、ガラス加工として実用可能なレベルに到達することを目標とする。
目標
成型・切断・接合という三つのガラス加工上の要素について、ガラス内部に生じる複雑な現象を解明することで、速度、精度、面積を飛躍的に向上させる革新的な生産技術を開発する。
【① 大面積精密成型技術の開発】
- 精密転写プレス成型を高度化し、大型の精密成型技術を開発(H28年度に6インチ、H30年度に8インチ)
- 大面積精密成型のための基盤となるガラスの粘弾性特性等を明らかにする。(H30年度)
【②異形物迅速成型技術の開発】
- ガラスにおいて困難であった異形物(複雑形状物)成型が可能な射出成型を実現(H30年度)
- 射出成型用の無機ガラス、有機-無機ハイブリッドガラスを開発するとともに、射出成型技術を開発(H30年度)
【③切断・接合技術の開発】
- 超短パルスレー ザーによりクラックや破壊の原因となる歪がない切断・接合技術をラボレベルで実現し(H28年度) 、さらに高速・高精度で実用可能なレベルに到達する。 (H30年度)
- インターポーザー、有機ELや量子ドット照明を見据えた試作(H28年度)と市場参入。(H30年度)
アピールポイント
① 光学素子レベルの精密な構造を、ウエハレベルの大面積ガラス基板上に成型する技術の開発
②ガラス材料を用いて樹脂と同様な射出成型を可能とする唯一の技術
③ ガラス材料を三次元的に高速・高精度で多点同時レーザー加工・改質可能な唯一の技術